足利市の工務店、福富住宅の髙橋です。
週に一度現場に撮影に行っている私ですが、
家づくりには想像以上に工程があり、見えない部分ほど丁寧な仕事が詰まっていると感じています。
私もまだまだ勉強中の身ではありますが、実際に現場で感じたことや、福富住宅の家づくりに対する思いなどを皆さんにお伝えできればと思います。
今までの現場レポートはこちら 福富住宅|現場レポート |
【目次】
1.はじめに|“見えない準備”が、家づくりの最初の一歩
今回のテーマは、「地盤調査」と「遣り方(やりかた)工事」。
どちらも、家を建てる前の“準備工事”ですが、実はとても大切な工程です。
私自身、家づくりの現場に関わるまでは「いきなり家を建て始めるのかな?」と思っていました。
でも実際は、その前に「この土地は安全に家を建てられるか?」を調べ、
「建てる場所をミリ単位で正確に決める」作業があると知って驚きました。
見た目には地味な工程かもしれませんが、これらがしっかりしているからこそ、安心して家を建てられる。
そんな、“見えないけれど大事な最初の一歩”を、今回はご紹介します。
▼そもそも、地盤や遣り方工事ってなぜそんなに大切なの?
家づくりと聞くと、間取りやデザイン、内装のことばかりに目が向きがちですが、
実はその家を「どこに」「どんな状態の地盤に」建てるかは、それ以上に大切なことかもしれません。
たとえば、地盤が弱いと建物が傾いたり、将来的にひび割れが起きたりと、
暮らしの安心や快適さに大きな影響を与えてしまいます。
また、どんなに立派な設計図があっても、現場で建てる位置が少しでもズレてしまえば、
法規制に抵触したり、生活動線が使いにくくなったりする可能性もあるんです。
つまり、地盤調査や遣り方工事は「後からやり直しがきかない」「家の精度と安全性を左右する」超重要工程!
家づくりの“見えないスタートライン”を正しく引くための作業だと、私自身、現場に通って初めて実感しました。
このブログでは、その工程がどんな風に行われているのかを、わかりやすくご紹介していきます。
2.地盤調査とは?|土地の強さを確かめる検査
家づくりは、いきなり基礎工事から始まるわけではありません。
まず最初に行うのが「地盤調査」です。
これは、家を建てる土地の地盤の強さ=地耐力(じたいりょく)を調べるための検査です。どんなにしっかりした家を建てても、
地盤が弱ければ建物が傾いたり、沈んだりしてしまう恐れがあります。
つまり、どんな家でも「安心して建てられる土地かどうか」を確認するのが地盤調査の目的です。
▼どんな方法で調査するの?
福富住宅でよく使われているのは、「スクリューウエイト貫入試験」という方法です。
この検査では、先端がスクリュー上になった鉄の棒を地面に垂直に立て、回転させながらどのくらいの力でどのくらい沈むのかを測定していきます。
調査する深さは通常5m程度で、建物の四隅と中央など複数個所で行います。
▼地盤調査をすると何がわかるの?
この検査を行うことで、次のようなことがわかります。
・どのくらいの深さまで地面がやわらかいか
・硬くてしっかりした支持層がどこにあるか
・地盤改良が必要かどうか
例えば、地盤の深いところにしか硬い地層がない場合には、「表層改良」ではなく「柱状改良」や「鋼管杭工法」が必要になることもあります。
▼ 地盤調査の報告書ってどう見るの?どこをチェックする?
地盤調査が終わると、調査結果をまとめた「地盤調査報告書」が作成されます。
専門用語が多くて少し難しく見えるかもしれませんが、チェックすべき主なポイントは以下の通りです。
チェック項目 |
内容 |
地耐力(N値) |
地盤の固さを示す数値。数値が大きいほど地盤が強いとされています。 |
支持層の深さ |
地盤が安定している層までの深さ。浅いと表層改良で済みますが、深いと柱状改良や杭が必要になります。 |
調査地点ごとの状況 |
建物の四隅や中央など複数地点での地盤の状況。場所によって地盤が異なるケースもあるので注意が必要です。 |
推奨される基礎の種類 |
地盤の状況に応じて、「直接基礎」または「地盤改良+基礎工事」が推奨されているか確認しましょう。 |
福富住宅では、こうした報告書の内容についてもお客様に丁寧にご説明しています。
「今後どんな工事が必要か」「費用にどんな影響があるか」を一緒に確認しながら進めていくので、初めての方でも安心して家づくりをスタートしていただけます。
▼現場で感じたこと
地盤調査はたった1日ほどで終わる工程ですが、
その結果次第で「家づくりができるかどうか」「どんな基礎を採用すべきか」が決まる、非常に重要なチェックポイントです。
実際に現場で見学した際、鉄の棒(スクリュー)がスッと地中に入っていく柔らかい場所もあれば、
ハンマーで叩いてもなかなか入らない硬い地盤もあり、「同じ敷地内でもこんなに差があるのか」と驚きました。
こうした違いは、目に見えるものではないため、きちんとした調査を行わなければ絶対にわからないことです。
調査結果によっては地盤改良工事が必要になり、将来的な不同沈下などのリスクを未然に防ぐことにもつながります。
それだけに、この地盤調査が家づくりの“最初の安心材料”になるのだと実感しました。
たとえ短時間の工程であっても、「見えない部分のチェックを丁寧に行うこと」が、
将来の安心につながる──そんな家づくりの基本を改めて教えてくれた瞬間でした。
3. 地盤改良って何?|地盤が弱かった場合の対応
家づくりのスタートは、まずその土地が「安全に建てられる場所かどうか」を見極めることから始まります。
地盤調査の結果、「このままでは建物を支えきれないかもしれない」という判定が出た場合、必要になるのが「地盤改良工事」です。
これは、建物の重さに地盤がしっかり耐えられるように補強する工事で、いわば家づくりの“見えない足元の基礎づくり”とも言えます。
▼ 地盤が弱いとどうなるの?
もし地盤が軟弱なまま建築を進めてしまうと、以下のようなトラブルが将来的に発生する可能性があります。
- 不同沈下(ふどうちんか):建物の一部だけが沈み込み、傾いてしまう
- ドアや窓の不具合:建物が歪むことで、開け閉めがしにくくなる
- 基礎や外壁のひび割れ:構造にストレスがかかり、耐久性が下がる
- 雨漏りやすき間風の発生:構造のゆがみから、気密・防水性が低下
- 地震時の揺れや倒壊のリスク増大
こうした不具合は、見た目の問題だけでなく、住まいの快適性・安全性にも大きく影響します。
さらに、一度建てたあとに修繕するのは困難で、費用も数百万円単位に及ぶケースがあります。
だからこそ、「最初にしっかり対策しておく」ことが、家づくりの安心につながるのです。
▼ 地盤改良工事の種類と特徴
地盤の状態や建物の規模によって、改良の方法は異なります。
主に以下の3つの方法が使われます。
① 表層改良(ひょうそうかいりょう)
・地表から1~2m程度の土を掘り返し、セメント系固化材を混ぜて地盤を強化する工法
・比較的浅い軟弱地盤に有効
・コストを抑えやすく、工期も短いのが特徴
② 柱状改良(ちゅうじょうかいりょう)
・地中に円柱状の穴を掘り、セメントミルクを注入して“コンクリートの柱”をつくる工法
・建物の荷重を支持層まで確実に伝えることができる
・住宅規模の建築では最も一般的な改良方法
③ 鋼管杭工法(こうかんくいこうほう)
・鋼鉄製の杭を地中深くまで回転圧入し、建物を安定させる工法
・重たい建物や、支持層が深い土地に最適
・3つの中では最も高コスト・高性能な方法
▼地盤改良ってどれくらい費用がかかるの?
おおよその目安ですが、建物の大きさや工法にもよります。
工法 |
費用目安(30坪程度の住宅) |
表層改良 柱状改良 鋼管杭工法 |
約20~40万円 約50~100万円 約100~150万円以上 |
※土地の条件によってはさらに費用が掛かるケースもあります。
▼知っておきたい「地盤保証」との関係
福富住宅では、地盤調査と適切な地盤改良工事を行った上で、「20年間の地盤保証」をお付けしています。
これは、万が一、地盤の問題で不同沈下などの被害が起きた場合でも、保証が受けられる安心の仕組みです。
ただし、この保証を適用するには「正しい地盤調査」および「適切な改良工事」が必須条件。
つまり、地盤改良はお客様の将来の安心を守るための重要なステップなのです。
4. 遣り方(やりかた)工事とは?|家を建てるための“基準線”
地盤が整い、地盤改良が必要であればその工事も終わったら、
いよいよ実際の建築工事の第一歩に入ります。
その最初の工程が「遣り方(やりかた)工事」です。
▼ 遣り方工事って、どんなことをするの?
一言でいうと、「家をどこに、どんな高さで建てるかを現場で正確に示す作業」です。
建築図面には家の大きさや位置が書かれていますが、それを実際の土地に写し出すための準備がこの工程です。
具体的にはこんな作業を行います:
- 敷地の四隅に木の杭を打つ
- 杭に貫板(ぬきいた)という木の板を水平に取り付ける
- 貫板に水糸(すいいと)と呼ばれる細い糸を張って、建物の輪郭や高さを示す
この「水糸」が、基礎の型枠や配筋を設置するときの基準線になります。
▼ 遣り方工事って重要なの?
この工程がずれていると、後のすべての作業に影響が出てしまいます。
- 家の位置が敷地の中心からずれる
- お隣との距離が予定より近くなってしまう
- 道路との関係や玄関の高さが変わってしまう
- 高さがズレて、雨水の流れが悪くなる
つまり、“たった数センチのズレ”が、暮らしやすさや法律違反につながるリスクもあるということです。
だからこそ、とても地味に見える作業だけれど、実はとても重要なんです!
▼ 遣り方工事で使う「道具」たち
現場では以下のような道具を使って、細かい確認をしています:
- 水準器・レベル:高さの水平を測るための機器
- トランシット(光波測量器):正確な角度や直線を出すための測量機械
- メジャー・スケール:距離の確認
- チョークライン・墨壺:印をつけるための道具
こうした道具を使って、職人さんたちがミリ単位の精度で仕上げていくのが、現場で見ていてとても印象的でした。
▼ 現場で感じたこと
建築業界で働く前から、新築住宅の工事現場で見かけていた木の柵のような構造。
当時は「なんとなく家を建てる場所を囲っているだけなのかな?」と思っていました。
でも実際にこの仕事を始めてから、それが「遣り方工事」という大切な作業だったことを知りました。
現場では、職人さんたちが専用の機械を使って丁寧に水平を測り、図面と照らし合わせながら、
ミリ単位で建物の位置や高さを正確に出していきます。
「ただ囲っているだけ」じゃない。
むしろ家づくりの精度を左右する、一番最初の“基準づくり”の工程だったんです。
職人さんと現場監督さんが声をかけ合いながら、迷いなくスピーディに作業を進めていく姿も印象的で、
まさに現場チームの連携力と経験が光る工程だと感じました。
5.現場で感じたこと|まとめ
地盤調査や遣り方工事は、家を建てる前の「準備工事」と思われがちですが、
実は家が完成した後の安心・快適な暮らしに直結する大切な工程です。
たとえば、地盤が不安定なまま家を建ててしまうと、
数年後に外壁のひび割れや床の傾き・きしみといった不具合が出ることがあります。
さらに、地震発生時の揺れの大きさや倒壊リスクにも大きな影響を及ぼします。
また、遣り方工事で基準線にズレが生じると、玄関の高さが変わってしまう、
お隣との距離が予定より近くなる、道路との接道位置がずれるなど、
生活のしづらさや法的なトラブルの原因になる可能性もあります。
つまり、地盤調査や遣り方工事は「見えないけれど、見えないからこそ重要な工程」なのです。
完成してから「床がギシギシする…」「雨水がうまく流れない…」といったストレスを感じないためにも、
最初のこの工程にきちんと時間と手間をかけることが、長く安心して暮らせる家づくりのカギになります。
家づくりというと、「間取り」や「デザイン」に目が行きがちですが、それ以前に大切なのが、「地盤」と「建物の正確な位置出し」です。
地盤調査で土地の特性を把握し、必要があれば地盤改良を行い、そのうえで正確な基準線をつくる「遣り方工事」へと進む──
その一つひとつの積み重ねが、安全で長持ちする家づくりの“土台”となっていることを、現場に通う中で強く感じています。
見えないところにこそ、プロの技術とこだわりが詰まっている。
そんな現場のリアルを、これから家づくりを考えている方に少しでも感じていただけたら幸いです。
福富住宅の協力業者会
職人集団チーム・スマイルの紹介はこちら |
6.次回予告|基礎工事編に続きます!
地盤調査と遣り方工事が終わると、いよいよ本格的な「基礎工事」が始まります。
地面を掘って砕石を敷き、湿気対策や鉄筋の組み立て、そしてコンクリートの打設へと進んでいきます。
普段なかなか目にすることのない、家の土台ができていく様子を、実際の現場写真とともにご紹介予定です。
「ただコンクリートを流しているだけじゃないんだ!」と驚くような工程や、
福富住宅が大切にしている“見えない品質”へのこだわりも、ぜひ知っていただけたら嬉しいです。
次回も、現場のリアルな様子をお届けしますので、どうぞお楽しみに!